さくらの杜の桜のはなし

其の十五桜の風情「サクラ」について

春――。
今日か明日かと待ち焦がれた末に、ようやく開花を迎える桜ですが、花の命は短くて......花が満開に咲き誇るのはせいぜい一週間か、長くても半月ほど。
その桜の花の散り方をいさぎよさに喩えて、軍人の心得などと言われた哀しい時代もありました。

そして、咲き誇り賑わっていたのも束の間で、気がつけば葉桜になっていたという風情そっくりなのが、露天商などでお馴染みの「サクラ」。今でも新規オープンの店などがたまにつかう、通りがかりの客への購買効果バツグンのあの商法です。
由来は江戸時代の芝居小屋で、役者の登場に合わせて「待ってました!」などと賑やかな声援を送ったことが始まりといいます。景気づけで最初は大賑わいを呈していたのが、はっと気づくとその客たちの影はなく、つまりは興行主に雇われた一群であったという、そうした輩を指す呼称が「桜(サクラ)」です。

新商品のデビューや、タレントのお出迎え光景など、現代でもさまざまなシーンでサクラが動員されています。しかし、語源をたどると「なるほど」と感心させられるほど奥が深いのも、やはり桜ならではですね。