日本人のほとんどが親しみを感じている桜ですが、およそ300万年前から東アジアの各地に自生していたようです。しかし、花といえば「桜」というほどに一般化したのは、平安時代に入ってからで、まだ1000年にしかなりません。
それ以前は、花といえば「梅」のことを指していました。これは、文化の輸入元であった中国の影響が強かったためと考えられています。それが次第に、日本独自の価値観が形成され始めたことによって、「花といえば桜」が定着したようです。
西行法師のように、月と桜を愛で、数多くの歌を詠んだ人もいます。
「風に散る花の行方は知らねども惜しむ心は身にとまりけり」
「散る花を惜しむ心やとどまりて又来む春の誰になるべき」
これらは、西行の残した代表的な桜の歌です。
いまや全国の桜の80パーセントを占めているという染井吉野(ソメイヨシノ)が生まれたのは江戸時代ですから、それ以前の桜は、いわゆる山桜ということになります。
山桜もソメイヨシノも、花を咲かせるのは春ですが、秋や冬に花をつける種類もあって、桜の花は今ではほぼ一年中眺めることができます。
熱海桜とも呼ばれる寒桜(カンザクラ)は、伊豆半島では1月から咲き始めます。同じく伊豆半島の河津桜(カワヅザクラ)も、1月ごろから開花し、東京でも3月上旬には花は終わっています。そして、寒緋桜(カンヒザクラ)、修善寺寒桜(シュゼンジカンザクラ)、大寒桜(オオカンザクラ)などが3月に入って咲き始め、それから染井吉野(ソメイヨシノ)の開花となります。
相前後して、山桜の花も一斉にひらき、春爛漫を迎えます。
それが終わったころ、今度は紅豊(ベニユタカ)など、さまざまな種類の八重桜が咲き始めます。
さすがに真夏に花をひらく種類はないようですが、秋になると十月桜(ジュウガツザクラ)がその名のとおり10月ごろから咲き始めます。それを追って、冬桜(フユザクラ)も、11月から12月にかけて開花します。また、この2種類は春にも花を咲かせるので、年に2度花を咲かせるという特徴的な種類といえます。
今現在も多くの研究機関が新たな桜の開発を試みているといいます。いずれ真夏に花ひらく桜の登場も期待できそうです。